パラグアイに行こう(3代目-2)

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エンカルナシオン駅(復元)・蒸気機関車の展示(2025年10月19日)

パラグアイ南部イタプア県の中心都市エンカルナシオンには、かつて国内鉄道の南端、そしてアルゼンチンとの国際鉄道連絡点として栄えた駅があった。その歴史を後世に伝えるために、市はこの旧駅舎を忠実に再現し、「エンカルナシオン鉄道駅復元(Réplica de la Estación del Ferrocarril de Encarnación)」として整備した。サン・ホセ海岸のすぐ近くで、街の中心からも徒歩圏内にある。現在の建物は、20世紀初頭の原駅舎の意匠を再現したもので、屋根材や鉄製部材など一部には実際に旧駅から回収されたものが用いられている。

エンカルナシオンに鉄道が到達したのは1911年6月9日で、当時この駅はアスンシオン方面から南下してきた鉄路の終着点であり、同時に対岸アルゼンチンのポサーダスとを結ぶ重要な結節点でもあった。鉄道は穀物や木材などの輸送を支え、また人々の移動を容易にし、南部経済圏の発展を牽引した。やがて、ヤシレタ水力発電所の建設によって水位が上昇し、周辺の鉄道施設は撤去や移転を余儀なくされたが、市民の間ではこの鉄道遺産を保存したいという声が根強く残った。その結果として復元駅舎が建設され、往時の姿が街に甦ったのである。

この建物はいま、エンカルナシオンの観光資源として再活用されている。内部は鉄道の歴史を紹介する展示空間「鉄道博物館(Museo Ferroviario)」として整備され、古い写真や駅員の制服、切符、工具などが陳列されている。駅の周辺も整備が進み、線路や転車台、駅名標識といった往時の遺構が保存・復元されており、訪れる人は100年以上にわたるパラグアイ鉄道の記憶を辿ることができる。

その駅舎の正面に展示されているのが、蒸気機関車104号(Locomotora N°104)である。フェロカリレス・デル・パラグアイ(Ferrocarriles del Paraguay S.A. = FEPASA)に所属していた機関車の一つで、軸配置は2-6-0型、いわゆる「モーガル型」と呼ばれる形式である。アスンシオンとエンカルナシオンを結んだ鉄路を走り、主に貨物輸送と旅客運行の両面で活躍した。パラグアイでは蒸気機関車の運行が長く続いたため、104号も21世紀初頭まで動態保存に近い形で残されていた貴重な車両のひとつである。

この104号機関車は2018年にエンカルナシオン市によって駅舎敷地に設置され、その後、観光アトラクションとして再整備が進められた。修復時には塗装の補修、レールの延長、貨車の併設などが行われ、地域住民や観光客が自由に近づけるようになった。汽笛やベルの音を体験できる仕掛けもあり、かつての鉄道の息吹を感じさせる演出が加えられている。

この展示は単なる産業遺産の保存を超えて、エンカルナシオンという都市の記憶そのものを体現している。鉄道が通じたことで街が発展し、そしてその鉄道が消えた後に人々が記憶を掘り起こして復元したという歴史の流れが、駅舎と機関車の並びに凝縮されている。青空の下に静かに佇む白い蒸気機関車と「ENCARNACION」と記された駅標は、往時の賑わいを想起させると同時に、過去と現在を結ぶ象徴的なモニュメントとなっている。いまでは市民の散歩道であり、写真撮影の人気スポットでもあり、サン・ホセ海岸からの風を受けながら、この鉄の遺産が静かに新しい時代の風景に溶け込んでいる。

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